O.Yの読書感想文

月平均4冊しか読まないにわかですが、自分なりに読んだ本の感想まとめています。

「ラブカは静かに弓を持つ」を読んで

ラブカは静かに弓を持つ

f:id:OY002:20230329012820j:image

作者 安壇美緒

出版社 集英社

あらすじ

武器はチェロ。
潜入先は音楽教室
傷を抱えた美しき潜入調査員の孤独な闘いが今、始まる。
金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!

少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……

 

⚠️注意⚠️

・あくまで個人の感想です

・ネタバレをできるだけ最低限に押さえる努力はしていますしこの先を読んだあとでも面白く読めるようにしているつもりですが一切ネタバレされたくない人は読まないことを推奨します

 

感想

音楽という媒体がどこまでも多様化し、カセットからCD

無断転載からサブスクへと変わってく現代の

きっとその先待ち受けているかもしれない

未来の音楽物語

 

カラオケからカバーライブから動画まで

音楽を使うたびに著作権料を支払うようになった世界

そんな世界で音楽教室の個人練習に著作権料を支払うべきか

という裁判のための証拠を集めるために

音楽教室に送り込まれた主人公は

いつしかその音楽教室に、チェロに、人に

救われるようになっていく

 

人を裏切るためにすべてを偽り

それでもそこに救われた彼は何を裏切り

なにを選ぶのかそういう物語

 

純粋に仕事しかなかった彼が救われた

のはチューバでした

でもきっとチューバだけではなく

そこで出会ったひとやその場所にも

意味があったのだと思う

 

そんな中でなにもなかった彼が

色んなものに満たされていき

救われていく前半から

選択の後半

選択を狭まれていく彼の姿と

求められる残酷な運命

そんな彼の姿に心を動かされる作品でした

 

「音楽著作権

音楽だけでなくアニメ、映画、漫画、小説

いろんな媒体がここ10年でいろんな

著作権が侵食され、被害を受けています

ここ5年でかなりマシになってはきましたが

きっと消えることはないでしょう

 

どこまで規制されるべきなのか、

そう考えるのは簡単ですが、実は被害だけではない

メリットもきっと存在するのだと思います

サブスクが普及し、いろんなアーティストが

注目され、テレビに出たり、ライブハウスでライブしたりしなくても、誰もが好きな

大衆音楽を作らなくても、曲が良くて魅力があれば、成功して、武道館を埋められるようになった世界が来たのはきっと無断転載があったからです

音楽やアニメの切り抜きによって、普通に生きていたら出会うことがなかった人に届くようになったのもきっとこれがあったから、

 

これは全部結果論できっとなくても良かったもの

でももし無断転載がなかったら生まれなかった

と考えると少しだけ怖くなります

これは思ってはいけないのかもしれませんが

ふとこの作品を読んで思いました

 

関係ない話が長くなりましたが

良い作品でした

優しく強くそして信じたものを

守り抜く強さはきっと簡単には持てない

だから何かを切り捨てでも守りぬくものを

見つけられた彼は幸せだったのだと思います