方舟
作者 夕木春央
出版社 講談社
あらすじ
9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。
⚠️注意⚠️
・あくまで個人の感想です
・ネタバレをできるだけ最低限に押さえる努力はしていますしこの先を読んだあとでも面白く読めるようにしているつもりですが一切ネタバレされたくない人は読まないことを推奨します
感想
本屋大賞受賞のミステリー作品
屍人荘の殺人から最近増えてきた
特殊クローズドサークルミステリーの中でも
最近で一番話題になっていた印象です
地下建築を出るために、一人を取り残す必要がある中で
誰を残し見捨てるのか?
9人のために1人を犠牲にしていいのかという
哲学的要素も含まれる序盤から
1人の死亡によって少し崩れ始めます
犯人を捜してそいつを生贄にしようという案と
なんとか脱出する方法を考えようという案が
別れていくのです
犯人をみつけてもそいつが本当に生贄になってくれるのか?
そもそも脱出ルートが他にあるのか?
どちらも微妙な中、先送り、先送りにした彼らは
どこへ向かい?地上にたどり着けるのか?
このようにミステリーだけでなく、リアルなところも大きく
誰かが残るように言い出すことを期待したり
もし犯人が残ったとしてそれは生き残った時問題にならないのか?という疑問が飛び出したりします
常にタイムリミットが近づく極限状態の中だからこそ
希望を願い、生を望むからこそ人はどこまでも残虐になれる
ある種トロッコ問題のような現場の中でこの作品はある疑問を深めます
「なぜ殺したのか?」
犯人は何を思って殺害し、そこまでして何を欲しかったのか
極限状態で自分が生贄に冴えれるかもしれない中でも
人を殺せてしまうほどの何かはいったい何なのか?
その答えがしっかり描かれた素晴らしい作品でした