兇人邸の殺人
作者 今村昌弘
出版社 東京創元社
あらすじ
“廃墟テーマパーク”にそびえる「兇人邸」。班目機関の研究資料を探し求めるグループとともに、深夜その奇怪な屋敷に侵入した葉村譲と剣崎比留子を待ち構えていたのは、無慈悲な首斬り殺人鬼だった。逃げ惑う狂乱の一夜が明け、同行者が次々と首のない死体となって発見されるなか、比留子が行方不明に。さまざまな思惑を抱えた生存者たちは、この迷路のような屋敷から脱出の道を選べない。さらに、別の殺人者がいる可能性が浮上し……。葉村は比留子を見つけ出し、ともに謎を解いて生き延びることができるのか?! 『屍人荘の殺人』の衝撃を凌駕するシリーズ第3弾。
⚠️注意⚠️
・あくまで個人の感想です。
・ネタバレがふくまれます。
感想
今村昌弘の「屍人荘の殺人」から続くシリーズの3作目
ゾンビ、未来予知ときて、今作は巨人がテーマになっていました。
改めてタイトルをみると、きょうじんていの中にも巨人が隠れていて、屍人荘の中の屍の意味を知ったときの衝撃をもういちど味わえましたね。
本作では前作と同じように廃遊園地の屋敷から逃げられなくなるいわゆるクローズドサークルの作品ではあるのですが、その状態が心理的に作り出されていました。
抜け出せるけど、抜けだしたら巨人が外に出てしまう。
そんな状態の中で探偵の比留子が動けない状態になり、羽村一人で突然起きた首無し殺人事件と屋敷からの脱出の2つをこなさいといけない窮地に立たされます。
比留子も安楽椅子探偵として、事件を解き明かしますが、暴走するかもしれない羽村の危険を案じて単独で行動し始めます。
そんな中で繰り広げられる羽村の決断
犯人の正体?
生き残りは誰なのか?
巨人は誰なのか?
がキーワードになっている作品でした。
最近「ブラッディマンデイ」というドラマを見返していたので、そこで出てきたセリフをかなり思い出しました。
「なにかを守る者は弱い。
だけどね、守りたいものがない人間は、
どんなに強くても、
最後には勝てない。」
今回の犯人も容疑者も主人公も皆守るものを持っていました。
だから皆この屋敷に立って行動しています。
だから守りたいものがないキャラのいない今回の物語とはあまり関係ないように感じますが、守りたいものへの強さは皆等しく持っていました。
ただそこで分けられたのは、守り切れなかった者と守り切るために戦う者の2つだった。
そういう物語だと僕は感じました。
守るものを持つ強さ。
そしてそれを奪われた時の怖さ。
それを物凄く感じた作品でした。
それでは